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悠久

悠久 大平恵吉君





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『お前はここで一生をおくるんだ。動いてはならん。じっ

として居れ。』

 それが、たとえ神の厳かなる宣言にしろ恁う云われ

て見ると、大概のものはうんざりしてしまう。神が、もし

恁う云う命令を下すものとすれば、人間に『あきる』と云

う感情を与えた神の矛盾だ。

『わたしですかい、然うですね。もうずっと続いて五十年以上もここに居りますよ。』

 東京控訴院の弁護士控え所、そこに小使をしている大平恵吉さん、ずう~~とヤニの音をたてながら雁

首さがりに、ぶかり、と、黄いろい煙を吐いたものだ。

 滅多に、神を疑うのは、よくないことだ。

                   [×]             [×]

『長いと云えば、長くないこともありませんね。二十三の年にここにはいって、もう今では七十六ですか

らね。しかし経って見れば、つい昨日のようですよ。たしか明治三年でした、弾正台が出来て、月六両の

給金で、ここへ入れて貰いましたが……。』
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