小桜縅 堀越紫郷さんの話
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鍬形打ったる兜を頂き小桜縅の鎧を着、などと云うと、喬二
さんの源平盛衰記を見て居るようだが、その甲冑見たような人
間どもが、馬に乗り、長刀を提げ、日を呑み、月を呑むここら
武蔵野を、縦横に馳駆したことがあると思うと、今は骨董品に
なってしまったあの兜鎧にも、誰しもいくばくの興味は持てる。それにしても、今のものが縅毛の色とり
どり、実のよしあしに、心底、魂を打ち込める筈はない、と思ったのは、ちと私としても早計だった。
◇
『武州の御獄神社に参詣して、畠山重忠の着用した鎧を見ました時、鎧のもつ魅惑とでも云いますか、制
作上の技巧芸術品としての高い匂い、それから、その鎧を着た重忠の颯爽たる勇姿と云うようなものが想
像されて、私は全くぼんやりしてしまったのです。
帰ってからも、その鎧が目にちらつき、鎧ばかり描いて居ましたが、私の不思議な様子が、いつか先生
の眼についたと見え、それ程お前が鎧に執心なら、いっそ絵をやめて、鎧師になったら何うだと云われ
たので、それから絵筆を捨てて、鎧師になる覚悟をきめました。
これは、今時に珍しい甲冑製作者として知られる、堀越紫郷さんの思い出話だ。先生と云うのは梶田半
古。その門に入って、一管の絵筆で、森羅万象を写そうとした彼は、鎧の魅惑から、唯一筋に鎧師になっ
たのである。
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2016-03-20 13:36
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