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英雄礼讃 大錦君

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 稽古がえりの乱れ髪……しらしら明けて大川に

打ちこむ太鼓の音。わたしにはよく分らないが、い

きで、且つ勇ましいものだそうだ。

力士の、侠と美とを象徴するあのみどりの黒髪を、ぶっつりと切って捨て、横綱大錦ともあろうものが、

忽然と角界から姿を消た時には、劇的な、センセイションをおこしたものである。

              △△▲▲

 『何うもあの時は、ああするより外にし方がなったのです。恩師の墓前に詣でて、角界引退の許しを乞

 うた時は、涙がひっきりなしに流れて来て、覚悟はして居たものの随分つろうございました。』

 今早稲田大学に通って居る元の横綱、細川卯一郎君は、その当時のことを思い出して、流石にくらい顔を

したものだ。

 『私が大阪の島之内から天王寺中学に通って居た時分は、ただもう大言壮語、父はわたしを商人にした

 かったでしょうが、わたしとしては華々しい英雄的の仕事に身を投じたかったのです。で、まア、誰も行

 く道ですが、わたしも軍人になろうと考えたものです。それで幼年学校の入学試験をうけましたが、脂

 肪肥満で、不合格と、来ました。いやもう、その時はがっかりしたものです。尤も十六の少年が、既に二

 十貫以上もあったのですからね。……』

わが小英雄は、ここでその持って生まれた体格を利用することに決めた。あの仲間で、これも多分に英雄的

素質を持って居た常陸山の門は、わが小英雄を入れるにふさわしい部屋だった。

              ▲▲△△


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