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首切り話を知らぬげに孫さん相手のー腕の喜三郎ー

首切り話を知らぬげに孫さん相手のー腕の喜三郎ー





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 誰がつけたか腕の喜三郎、わが内相鈴木喜三郎閣

下の第一印象は流石に切味の好い、親分肌が仄めく、

いまこの人の一睨みで、浮草稼業の知事諸公、首が

何処へ飛ぶか解らぬと云う物凄さだ。

 『なに趣味の話をせい、それどころか、地方長官

 の更迭が目の前に横はって、二十日頃までには片

 をつけようと思ってるところだ』

と、取着く島もない、高飛車の挨拶だったが、話は

自然に展開してゆく、

 『この前浪人する以前は草花弄りなどもしたが、

 浪人して見ると、君、変なもので趣味どころの騒

 ぎでないよ、世間じゃ、あの男も暇で困るだろうと云う風に見るだろうが、何うして三年このかた免囚

 保護事業に没頭して、好きな相撲も見て居られなかったよ、之でも若い頃には嘉納さんの所で、柔道

 も盛んにやったがね』

と、即ち仇名が云うその腕を撫しつつ、

 『芝居も嫌いじゃないが、何うも涙が出て弱るよ』

と云う。そこへ令孫が絵本を持って、よちよち出て来る。

 『さアさアお祖父ちゃんに御本をお見せ』と眼を細くして悦に入る。

凄い一面に、この温かさ、これが此の人の命かと思う。



                       (昭和二・五・一七)


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