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八十不倦

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『大工の藤さん』なら棚でも釣って貰え。『島藤の親方』となると、一寸

貫禄がつく。市会議員島田藤吉君となって、増上寺の貫主になり損っ

ても郷党の者は見返せる。

『話せば長いことですがね、母は私を連れて他家に嫁ぎましたが、義父が亡くなると、直そこから逐い出

されてしまいました。ちょうど九つの時でした、十三まで母の里に居て、それから大工の小僧にやられ、二

十歳までに何うやら一通りのことは覚えました。

 今思っても、随分つらい苦労をしましたが、何とかして、人を馬鹿にするやつらを見返してやりたいと

思いましてね。それには武士になって見ても、村の者の頭を下げさせることも出来なかろうから、これは

増上寺の貫主になるに限ると思いました。』

               ◎

 島藤と云えば、仲間うちでは聞えたきけ者。叩き大工から仕上げて二度までも市会議員に選ばれ、震災

後は本所深川の道路が高くなったのは、彼に負うところが多いと云われる。

『冗談ではなく、その時はほんとに然う思い込んで、国を出たのが慶応三年でした。ところが江戸に来て

見ると、もう徳川が倒れると云う騒ぎ、増上寺も何うなるか分らぬと云うので……。』

 ここで彼、藤さんは、ふたたび釘の頭を叩くことになったが、真面目にさえ働いて居れば、救いの手は

必ず伸びて来る。

 『本所の帝釈様の和尚さんが、藤さん、お前もいつ迄親方の厄介になって居ても芽も吹くまい。これをや

るから一本立になって見なさい……。』


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タグ:八十不倦
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