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活銅像 浪僧の米政策

活銅像 浪僧の米政策





  
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 見違える様に奇麗になった西郷銅像の前に、之はま

た活ける銅像が朝から晩まで黙々として行人を注視し

ている。

 茶色の帽子にトンビを羽織る、この銅像は、時々疲

れ休みの時、三脚にドッカリ腰を下す。風雨に晒された赭顔に数奇波瀾の人生を畳んだ皺は、何うしても

七十を越して見える。無表情、不動の姿勢で日中の九割は厳立して居る。

 その生きた銅像の目的は、自分の前に立止まる人々に無言で一片の宣伝文を渡すのみ。

               ◇

 『わしは浪僧じゃ、浪僧とは読んで字の如く。寺門に所属しない僧侶なのじゃ、目的は世教改善にある

のじゃ、わしの思想も、わしの生涯も皆此の宣伝文に書いてあるから、之を読んで貰うと解る』

此の金仏さん却々叩いても手耐えがない、何とか音を出そうと、大手搦手から詰めかけると、○て浪僧は

細い目をして語る。

 『我輩は七十三じゃよ、是迄五十年間、斯うして津々浦々を巡廻、上野は今月三日から始めたばかりじ

 ゃ、朝の九時から日没迄、此の刷物を撒いている。生れは京都じゃよ』

記者は此の浪僧の思想、彼自身の生活問題にも触れて見度いとするのだが、遂に彼は、蠑螺のように蓋を

してしまった。

刷物の末尾にある『人道教要話集、代価五円以上、貧僧運動費に宛つ』とある。高い本であるが、之が彼

のパンとなり、比較的上等のトンビにもなるのであろうか。文の中には、思想問題から経済問題に至るま

で所謂経世済民の名論を吐いてある。その一節に曰く

 『日本は山国だ依て山の頂上に迄無数の殖産地を起し、飛行機を以て

 連絡を取れば生活難もなくなるであろう』



                                 (大正一四・一一・一一)



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